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サッカーボールの最も優れた表面のデザインは黒の五角形と白の六角形の組み合わせであることはこのデザインがサッカーボールの記号にも成り得ているところから、だれしもが認めざるをえないところであろう。私もサッカーボールを絵に描く時はこの白黒のデザインを利用している。
なぜこのようなデザインが生まれたか?それはサッカーボールの特徴にある。球技で使われるボールにはさまざまなものがあるが、サッカーボールが他の競技の球と最も異なるところは縫い方にある。五角形と六角形の組み合わせで球面に仕上げている点である。それに素直に塗り絵をしたら、皆がよく知っている白黒ボールが出来上がったのである。
しかしメーカーはそれを無視し始めた。1978年にTANGOというボールが世に出た時に、「おいおい無茶するなよ!」と思った人も多いのではないか?全く縫い目無視で表面デザインを行っている。おかげで縫い目のへこんでいる部分には印刷が施されておらず、デザインが切れているのである。20歳の私は「何故このようなことを・・・」と思った。しかし、サッカー場でTANGOを見ると「オッ!タンゴじゃん!ニューモデル!」とちょっとうらやましかった。それまで見慣れていたボールはどれも見た目は同じであったからだ。
私はこの公式ボール「FEVERNOVA」の記者発表があってから、すぐにある人からプレゼントしてもらった。その時の正直な気持ち・・・。「うれしーー!すげーーうれしい!テレビや新聞に出ていたやつと同じだ!ミクロの球体が表面にあるやつだ(シンタクティックフォーム)!正確なパスを出せる最新技術を取り込んだハイテクサッカーボールだ!手裏剣のデザインのやつだ(トライゴン)!蹴りたーい!早く蹴りたーい」とこんな具合ですから、FEVERNOVAに関しては私に文句はない。
アディダスはよくぞ2002年に、これまでのサッカーボールのイメージをマイナーチェンジではなく大胆に変えてくれた、まずはそこに感謝したい。TANGO時代がずーっと続いていただけに、今回のワールドカップもその延長線上ではボールだけでこれだけ熱くは語れないし、ボールをもらってもそれほどの喜びはないであろう。このFEVERNOVAはまずは2002年を際立たせてくれただけでもOKである。
肝心のデザインについては、トライゴンと呼ばれる4つの手裏剣のような形で構成されているグラフィックが、五角形と六角形の組み合わせの中で実に無駄なく処理されている。1つのトライゴンは1つの六角形と6つの五角形の計7面に印刷されており、版の形の種類は3通りだけだ。このシンプルな点が複雑な形を球面にすっきり収めている大きな要因である。
また縫い目の中まで図柄が入り込んでいる点も、4つしかない絵を引き締めて力強さを出している優れた点である。しかしトライゴンの色は、もっとはっきりした色であった方が試合中にこのデザインの威力を発揮できたのではないか。そう思い実際に蹴ってみると、回転した時にトライゴンの形が消えてしまう。TVなどでスローモーションを見た時にも、色のめりはりがないだけに回転の具合がちょっと分かりずらいのではと危惧してしまう。止まっている時には回転して見えるデザインではあるのだが・・・。
FEVERNOVAもきっと今後TANGOのようにいろいろマイナーチェンジをしていくのではないか。その中できっと色をはっきりさせたバージョンも出てくることであろう。またデザインに関してメーカーの説明の中で、トライゴンは国境を越えた協調のシンボルとある。私もこれは本当にそうだと思う。韓国にとっても、日本にとってもFEVERNOVAは私たちの「2002FIFAワールドカップKOREA JAPAN」の公式ボールなのだと感じ取られる。
日比野克彦 2002、1.30
日経デザイン「私論一石25」
2002年2月24日発行(毎月24日発行)第177号 より転載
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